鈴木茂夫氏(06-04-05)

乱流翼の話(3)、橘清三、航空ファン、昭和31年5月号からの引用です。

12..鈴木茂氏の研究
旧東京帝大航空研究所では中学生を出たばかりの若い優秀な人を選抜し、2年間の特殊専門教育を施して実験助手として採用した。鈴木氏はその初期の人で、木村先生などの実験を手伝い、高橋慎一氏らの先輩に当たる。同氏の独創的な研究についてはよく知られており、乱流翼については何れ御本人から詳しい御発表があるものと思う。差当り必要なことだけ紹介する。
『私は昭和16年に、翼の後縁を段々厚くして滑空実験をした結果、その差を認められない事を知り、これは確かに揚力係数の小さな値に於ても、翼上面では気流の剥離あるに違いないと考え、・・・昭和24年に旋回腕を考案し、多数の翼型を実験した結果、R.408、410、412等、最大翼厚比が後方にずれているものは、揚力係数の増しに対する抗力係数の増加率が、普通の最大厚みを30%弦長に置いた翼型よりも極めて大きく・・・』
以上は航空情報第7集から収録した一文である。・・・
古典的な実験装置を生かした旋回腕は、カットアンドトライの時間と努力が大きく、想像以上の苦心を要する。例えば翼型1枚の3分力(揚抗力、モーメント)測定に連続10時間以上かかり、実験中に卒倒したこともあるという。測定範囲や精度に難点はあっても、乱れがまったくない特徴は高く評価さるべきで、この装置によって従来の風洞実験値を再検討すれば得るところが大きいであろう。
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鈴木さんの近所に住んでいて、同じ杉並模型飛行機クラブのメンバーだったグリーンパークフライヤーズや東京選手会の元会員今村八平さん(故人)の話:「旋回腕の実験装置を実際に見た。それは座敷の真ん中に置いてあり、旋回腕自体は剣道の竹刀だった。」
今回の公表も今村さんの手持ちのコピーによるものです。